B型ウイルス肝炎に対する治療薬ゼフィックスの投与が医療保険で認められた2000年11月から2003年10月までに、当院で投与を開始した方が61名となりました。内、投与開始日より6ヶ月以上経過している方は57名となっております。57名中投与期間が6ヶ月に満たないで中止・中断した方、他の医療機関へ紹介または他の医療機関からの紹介でデーターがとれない方を除く46名について集計しました(表1)。
投与中急性増悪を見た方は5名で投与前にHBe抗原陽性群から4例、HBe抗原陰性群から1例の出現でした。これらはB型肝炎ウイルスのDNA ポリメラーゼ活性中心のアミノ酸配列YMDDのメチオニンがヴァリンやイソロイシンに変わったYVDD,YIDDに変異してしまったウイルスが出現し、ラミブジンが効かなくなってしまったり、従来のHBe抗原を産生する野生株が増加した結果と考えられます。経過が良好で投与を終了した例は7例で、表2の成績です。HBe抗原陽性群からはHBe抗原が陰性化しHBe抗体が陽性となり(セロコンバージョン)GOT,GPT正常化、HBV DNA陰性化をみた3例を投与終了としましたが2例は再燃しました。HBe抗原陰性群からは終了した4例からの再燃は1例でした。投与中の症例は27例で22例(81.5%)がGOT,GPT正常化、20例(74.1%)がHBV DNA陰性化をみています。(表3)
ラミブジンは使用開始とともにB型肝炎ウイルスの増殖を抑え、肝機能検査値を正常化しますが、使用期間が長くなるにつれ肝炎の再燃を来します。この意味でこの薬剤は短期の成果はあっても、長期の効果が期待できない悩みがあります。しかし、たとえ肝炎は再燃したとしてもインターフェロンや強力ミノファーゲンCを使うことで肝炎を沈静化することは可能です。YMDD株の変異株はそれ自体、高い増殖能力はありませんので、再発したとしても野生株を抑えるためにラミブジンは服用を続けていかねばなりません。現在、ラミブジンと同様にB型肝炎ウイルスの増殖を抑えることのできるアデフォビルが治験にはいっていますので、そう遠くない将来、患者さんに提供されてくるでしょう。
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