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X線CTが臨床に登場して約四半世紀以上過ぎました。その間いろいろ改良され、その進歩には目を見張るばかりです。当院でもその進歩に予算の関係で少しずつ遅れながらもどうにかついて参りました。今回のCTスキャン装置は三台目となります。 実際胸部(肺)の検査では従来のCTと比較し半分の15秒程度で肺全体のスキャンが終了してしまいます。腹部の場合でも半分とはいきませんがかなり短縮しています。 従来は検査をしている我々も患者さんと一緒に検査中息止めしてみますが、かなり辛かったです。 このように検査時間が短縮したということで、患者さんの負担が少なくなっただけでなく、放射線の被爆量もかなり(30%以上)軽減することができました。 また機械が新しくなったのを期にCT室も思いきって模様替えを致しました。天井には空の模様の壁紙を張り、周囲も威圧感の無いゆったりした雰囲気にしました。ちょっと楽しく感じて検査に対する不安感が多少でも軽減されれば嬉しいです。 さて、検査時間が速いことは実際体験していただければお分かりになりますが、このCTを導入致しましたのは時間の短縮と被曝量軽減のためだけの目的ではありません。今までのCTとの大きな違いは3次元カラー立体画像化の機能があることと、より小さい病変が検出できるということです。 それでは、代表的な画像をおみせします。(写真1)これは、肺の写真です。10〜15秒程度の息止めで肺全体の検出が可能です。小さな結節状陰影がみられます。5程度ですので、これだけですぐ肺癌と断定はできませんが、経過を見る事で癌なのかあるいは、結核腫のような良性のものか診断できます。 いずれにしても早期に病変を見つけて対処する事が大切です。当院のドックでは肺癌の検査はすべてCTでしております。喫煙の習慣のある方そしてその御家族の方はマルチCTでの検査をお勧めします。一般の胸部写真ではある程度の大きさにならないと見つけることは不可能ですので、検診にCTを取り入れる施設が増えています。 次は胸部大動脈瘤の症例です。(写真2)胸部大動脈という太い血管が瘤の様に膨れてくる病気です。この瘤が破裂しますと一瞬で死に至ります。従来は危険をおかして血管撮影をしましたが、マルチCTの3D(立体画像)では非観血的に動脈の状態を知る事ができます。そして、手術が必要かなどの治療法も判断できます。これが大きな特徴です。大動脈に限らず、より細い下肢の動脈、腎動脈、頭頚部の動脈などの狭窄や閉塞の部位、壁在血栓や動脈壁の石灰の状態も判ります。最近では心臓の冠動脈にも応用されかなり良い成績がでています。 次は腹部の写真です。(写真3)これは肝臓癌です。大きさは約10mmです。この程度の大きさで発見できれば治療法もいろいろ選択できますので予後は良いわけです。 また、この画像から、胆嚢、膵臓、脾臓、腎臓、胆管など描出されていますのでそれらの臓器の病変も分かります。 その他、頭蓋骨、頚椎から骨盤骨まで、全身の骨および関節を検索する事ができます。MRIでは、人工骨や金属が埋め込まれた方は検査できませんがマルチCTでは可能です。 造影剤を使用したり、種々の撮影法、画像処理法を駆使することによりさらにいろいろな病変を検出することが可能です。 貴重な装置ですので我々だけで利用するのは勿体無いと思い、婦人科、整形外科など御近所の先生方にも使って頂いております。 検査に携わる医師も技師もまだまだ、勉強する事が山積ですが、一つ一つの症例を大切に、丁寧な仕事をしてまいります。どうぞ、MRIと同様に御利用になって頂きたいと存じます。 (相川 礼子) |
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