2001年国民栄養調査によれば1980年から2000年の間に女性の20才代、30才代を除いて男女とも肥満者の割合が増加してきています(図1)。 事情はアメリカでも同様で、アメリカ国立健康増進センターによれば1991年から2000年10年間で成人の肥満者の割合が12%から19.8%に急激に増加してきています(グレッグ・クライツアー著、竹迫仁子訳「デブの帝国・いかにしてアメリカは肥満大国となったか」)。 | ||||
【社会経済的要因】 | ||||
肥満が伝染病、疫病の如く、病人が急速に増加しているとすれば個人の努力にも限界があります。 疫病をもたらした環境に視線を注がねばなりません。 水道水にフッ素を入れて虫歯を減らしたのと同じ考え方で個人と努力とは別の次元での対策を講じるべきだという意見も出ています。 前掲の「デブの帝国」によれば1970年初頭、アメリカは雑穀類の輸出を目指す農業政策に変更されトウモロコシの生産量が大幅に増加してきました。 ちょうど同じ頃、でんぷんを化学処理することで果糖とブドウ糖の混合した甘味料=高果糖コーンシロップが安価に製造できる技術が導入され、高価格の砂糖に代わって使われるようになりました。 アメリカでこの30年間、食物の中で一番の変化は高果糖コーンシロップの消費の増大で。肥満者の数も平行して増加しています。 ソフトドリンクの消費と肥満者の増加と反比例して、ミルクとカルシュウムの消費は減少しています。 また、アブラヤシからとれるパーム油がインドネシア、マレーシアなどから安く輸入され、豚脂(ラード)に似ていることから食品の加工に使われるようになりました。 そこで、コーンシロップとパーム油を歓迎したのがファストフード産業でした。 彼らは食品のジャンボ化と低価格で競い合い、世界中に出店し世界の食生活に変化をもたらしています。 今日、パーム油は大豆油に次ぐ第二位の生産量で、間もなく大豆油を追い越すとみられています。 わが国でも大量に輸入されマーガリン、即席麺、菓子の揚げ油、菓子やパン製造時のショートニング、精製ラードなどの食品メーカーが消費している他、石鹸、洗剤、工業用潤滑油、化粧品などに用いられています。 パーム油を生産する現地では森林の乱伐や農薬被害などの深刻な問題が起きています。 |
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【消費者側の要因】 | ||||
安価でジャンボな調理済みの食品を簡単に買うことができるために、国民栄養調査によると、20才から49才の成人でカロリー摂取量のなかで占める脂肪からのカロリーが既に適正であるとされる25%を上回っています(図2)。 過剰にエネルギーを摂取することになり、糖尿病、動脈硬化症がふえています。 成人病の予備軍である肥満児も増加しました。 成人男子で30%前後の人が毎日一回以上外食をし、20才代の女性の40%が出来合の食品をかってきて、自分で食事を作ったことがないと答えています。 自宅で調理したものを家族で食べるといった食事習慣も大きく崩れてしまいました。 さらに栄養の知識をテレビからもらえるという人がもっとも多く、グルメ指向やブランド好きで、高カロリー食の傾向となり、一方、ダイエット食、健康食品の乱用などで、健康障害の危険が潜んでいます。 | ||||
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(相川 達也) |