【1.インターフェロン(IFN)とは】
 IFNは、1954年に日本人研究者によって発見されました。その後の研究からウイルス感染により体内の細胞から産生されウイルスの増殖を邪魔する作用を有することや、腫瘍を抑える作用も有することが判明しました。慢性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、腎癌などに有効とされてきましたが、最近ではC型慢性肝炎からの肝癌の発生を抑制する作用を有することも認識されるようになっています。従来IFNには様々種類がありますが、C型慢性肝炎の治療に有効とされているのはIFNα、IFNβです。IFNαには天然型と遺伝子組換え型がありますが、IFNβは天然型のみです。
【2.C型慢性肝炎の治療】
 1992年2月にIFNの6ヶ月投与が承認され、健康保険で患者さんに一回のみの投与が可能となりました。その後、長らく投与期間の延長や再投与の必要性が学会などで言われながらも改善されませんでした。しかし、別表1のようにこの4年ほどでやっと治療の選択肢が増しました。日本人の多くが感染しウイルス量も多く治りにくい遺伝子型1b型のC型慢性肝炎の方でもペグイントロンとリバビリンの併用療法を1年間続けると、約6割の方が著効にもっていけるようになりました。C型慢性肝炎の方の治療では今後しばらくはこの併用療法が治療の中心となっていくのは間違いありません。ここでは分かりやすく、ウイルス量が多い方は原則ペグイントロンとリバビリンの併用療法、ウイルス量の少ない人ではIFN単独療法(ペグインターフェロン単独を含みます)と覚えましょう。

【3.IFN自己注射】
【a:自己注射が認可された背景】
 C型慢性肝炎の患者さんの診療において我々臨床医の究極の目標は肝臓癌の予防です。そのために、患者さんの年齢、性別、肝炎の進み具合、ウイルスの型、量などを総合的に勘案し、患者さんを大きく2群に分けて考えます。すなわち、@HCVウイルス排除を目的とした治療(強い治療でもあり副作用が多い)をするべきか、AGPTの安定を優先にしたIFN治療を考えるべきか、です。このいずれの治療でもIFN自己注射が有効なことがあります。この場合自己注射が認可されたのはIFNα製剤です。(週1回投与が可能なペグ製剤は除外されています)
@HCVウイルス排除を目的としたIFN自己注射
 65歳以上の方や、高血圧、糖尿病、貧血の合併症がある方では、ペグイントロン+リバビリンの併用療法が行えない場合があります(個別にご相談下さい)。挙児希望の若い方でも行えません。こういった方たちでは、比較的多くの量のIFNの自己注射による2年間の長期治療の可能性があります。この場合、自己注射できる利点として、夜間に注射できるため、副作用を回避できることがあげられます。
AGPT(肝機能)の安定を優先にしたIFN自己注射
 難治性であるために様々なIFN療法や、IFN+リバビリンの併用療法でも著効にならなかった方ではGPTを安定化して発癌を予防していこうといった治療に切り替える必要があります。この場合はIFNα製剤をなるべく少量として週2〜3回の自己注射で肝機能を安定化させることが可能になりました。

【b:自己注射の実際】
 外来担当医からIFN自己注射を勧められた患者さんは、IFNα製剤を2週間分持ち帰っていただき、自己注射していただきます。従いまして2週間に1回は外来診察の必要性が残りますが、通院の負担は随分と軽減されるはずです。但し、初めてIFNを打つ方に最初からIFNをお渡しすることはできません。最初の内は入院あるいは外来で正確なIFNの打ち方の指導をいたしますので、あまり不安に思われずに何でも相談してください。

【4.まとめ】

 最近は治療のガイドラインも整い、以前に比してC型慢性肝炎の治療の選択肢も豊富になりました。肝炎を進行させずに肝癌を予防する観点で分からないこと、不安に思うことは何でも相談してください。

(小島 眞樹)