6月22日、介護保険の改定案が自・公・民各党の賛成多数のもと参議院で可決されました。改定のポイントは次の5点です。

1.筋トレや栄養指導をする「介護予防サービス」
2.施設入所者の居住費や食費を自己負担に
3.総合的な相談や介護予防のマネージメントをする「地域包括支援センター」を市町村に新設
4.夜間対応型訪問介護など「地域密着型サービス」を創設
5.ケアマネジャーの資格を5年ごとの更新制に

 しかし改定の中心的な狙いは、要介護度の低い人を対象にした「介護予防サービス」の導入と、施設入所者の食費・居住費の自己負担化を計り介護費用を抑制することにあります。
在宅の多くが従来のヘルパーサービスを受けられなくなる?
 まず「介護予防サービス」についてみてみましょう。
 従来の「要支援」と「要介護1」を「要支援1」「要支援2」「要介護1」に再編し、要支援者に栄養指導や筋力トレーニングを受けてもらうことになります。
 「過剰介護により状態が却って悪化している」としてこの改編を行うものですが、実際は、軽度介護者の悪化の要因は「過剰介護」にあるのではなく、また、軽度者ほど現行の「介護給付」サービスによる予防効果が高いという厚労省のデータもあります。
 「介護予防」というもっともらしい新造語の中に介護費用の抑制と、1セット700万円もするという「筋トレマシーン」の売り込みを目論んだ産業界の意図が透けて見えます。
施設入所者は年間約40万円の負担増に・・・
 今度の改定により施設入所者の食費や居住費が全額自己負担になります。
 低所得者への負担増が予想されるため「負担上限額」を設定されましたが平均で年額40万円ほどの自己負担が増えると予想されております。しかもこれは今年の10月から実施されています。現場では様々な混乱と試行錯誤が生じています。自己負担増で困っている方も出ております。わずかな年金を頼りに施設に入所や通所をしている人たちは貯金を取り崩すか、貯金がなければ行き場がなくなってしまいます。
「改革」は財界の要望に沿って
 今度の改革には財界の意向が色濃く反映しています。
 財界の代表が3割ほどを占める財政制度審議会の建議書「『平成17年度予算編成の基本的考え方について』のポイント」によると「介護は、自己負担率の引き上げ(2〜3割)、ホテルコスト・食費等の給付除外、保険免責制度の導入検討、低所得者の範囲の限定、保険者機能の強化、民間参入の更なる促進、総供給管理方式の導入等」を行うとしています。一方、同じ建議書で公共投資については「景気対策のための大幅な追加が行われていた以前の水準を目安に引き続き着実に重点化・効率化。・・対GDP比は、今後とも、主要先進国の水準も参考としつつ、中期的に引き下げていく」とうたっています。また、防衛費については「見直し、効率化」をいうだけです。
 社会保障費の抑制については、ほかにも「生活保護の母子加算などの廃止」とか、「保険でカバーする医薬品の範囲の抜本的見直し」とか極めて具体的・積極的で、反面、公共投資や防衛費ついては努力目標に止まっています。
 年金減額、医療費自己負担増、さらには増税・保険料の値上げと生活苦は増すばかりです。ここにも今の国政のありようがまざまざとみてとれるのではないでしょうか。
(斎藤 禎量)