高血圧!なんて嫌な響きでしょう。テレビや雑誌のコマーシャルでも高血圧を憂える言葉が氾濫しています(ちょっとやりすぎの物もありますが)。でも我々は時々血圧を測定し高値ですと不安になって受したり、正常範囲ですと何故か、ずーっと健康で長生きできそうな気がするのも不思議です。 では、何故高血圧はいけないのでしょう。そもそも血圧はどの位が良いのでしょう。ご説明致します。 そもそも高血圧の概念が得られたのは1896年に血圧計が作られてからで、その後高血圧のガイドラインというものが米国・WHO・日本などで改訂を繰り返しながら作られてきました。今回は日本の高血圧治療ガイドライン2004年(日本高血圧学会)を基準にご説明します。 1.降圧目標 *高齢者 140/90mmHg未満 *若年・中年者 130/85mmHg未満 *糖尿病患者・腎臓病患者 130/80mmHg 未満 これ以上の血圧が持続する場合には降圧薬を開始するのが良いとされました。軽症・中等症の高血圧、あるいは高血圧前症(120-139または80-89の血圧)でも生活習慣の修正を必要とします。 2.高血圧による臓器障害 高血圧、たとえ軽症高血圧でも長期間にわたって持続しますと徐々に動脈硬化が促進されて、脳卒中・心筋梗塞・心肥大・大動脈解離・閉塞性動脈疾患・高血圧性網膜症・腎臓病などを引き起こし生命に関わります。 3.生活習慣の修正項目
これらは降圧薬を服用していても持続する必要があります。 以上が2004年の新しいガイドラインの一部です。 このように血圧を下げることは大切なのですが高血圧の治療をきちんとしていても、脳卒中の40%、心筋梗塞の14%しか、その発症を抑えることができないとが報告され問題になりました。 その理由として考えられるのことの一つが血圧は変動すると言うことです。一時白衣高血圧が問題になりましたが、逆に診察時の血圧は正常でも夜間や早朝に血圧が上昇する方があります。どなたでも日内変動といって、血圧は変化するのが当然です。通常の、日内変動は夜に血圧が下がり明け方目覚める頃から上がり始めます。しかし、夜でも逆に上がったり明け方に著しく上がったりする早朝高血圧といわれる症状を呈する方があります。このような方は、脳卒中や心筋梗塞になりやすいと言われています。これには交感神経系の亢進やレニン-アンジオテンシン系という動脈硬化などの原因となるホルモンが作用して血栓を作りやすくなり発症に至るのです。これを防ぐには、血圧日内変動パターンをご自分でも把握することが大切です。 私は最初に降圧薬を処方するときには、24時間血圧計を装着して頂いています。 これは24時間、30?15分毎に自動的に機械が血圧を測定してくれるもので、入眠中の血圧も把握できます。それにより、降圧薬を決定する一助となりますし、患者さんご自身も血圧変動が判りますから、高い時間帯には無理をしないようにしたり、ご自身の健康管理に役立ちます。 お二人の24時間血圧計のデーターをお見せします。 【症例1】 昼仕事中はかなり高値ですが、入眠後は低下し目覚めとともに上昇しています。このような方は昼と早朝の血圧上昇を抑える薬が必要です。 【症例2】 夜間入眠中も高値です。この場合には24時間全体の血圧のコントロールが必要です。 このように、血圧は変動する事、そしてその変動の状態を把握することが非常に大切です。初めて降圧薬をお飲みになるときだけでなく、すでに飲んでいる方も、何時もの血圧とかなり差がでたときや、眩暈・頭痛など症状があるときには24時間血圧計で日内変動を再確認することが必要かもしれません。 以上簡単に降圧の意義についてお話致しました。高血圧は遺伝的要素も多分にあります。私の父方は皆脳卒中で亡くなっていますので私も他人事ではありません。そろそろ気をつけなければならない年頃なのです。 |
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(医師 相川 礼子) |