未だにご自分がC型肝炎ウイルス(HCV)に感染していることを知らないでいる方は決して少なくありません。HCVに感染した方の15〜20%はウイルスが排除されますが、多くは長期間ウイルスの感染が持続し、知らぬ間に慢性肝炎、肝硬変症、肝ガンへ進行した状態ではじめて病気であることを認識する場合もまれではありません。
発見の遅れには三つの理由があります。一つはHCVに感染しても、急性肝炎のはっきりした症状が現れるとは限らないため、感染を自覚していないことと、二つ目にはHCVに感染していても肝機能検査は正常値であることが多く、HCVの検査をしない一般の検診では感染が発見されないということ、三つ目はご自分が感染の高危険群であることを自覚しないため、検診を受けていないことがあげられます。
これまでの患者さんは、献血時検査、肝炎ウイルスの節目検診や医療機関を受診したときに偶然発見されたという方が多いのが実情です。
 感染して20〜30年過ぎる頃には慢性肝炎はすすんで、肝硬変症、肝ガンに移行していることが知られています(といっても統計を一律に当てはめることはできません。多数の報告で肝炎の進行する程度は様々ですから、患者さん個々にご自分の状態を正確に把握し、医師に経過を観察してもらうことが大切です)。
 今日ではHCVの感染経路についての研究が進み、肝炎感染の高危険群とされる方々が存在することがわかってきました。次にあげる条件の方は是非、HCV検査をお受けになることをおすすめします(太字の方はことに重要です)。

T.経静脈汗腺
1.輸血、あるいは血液製剤?献血された血液のHCV検査が実施されなかった1992年以前の輸血がことに危険とされます。1994年以前にフィブリノゲン製剤を使用した方
2.医療処置を介しての感染-(例)先天性心疾患の手術、結核などの開胸手術、出産あるいは婦人科処置、開腹手術、広範な火傷、長期の血液透析、内視鏡検査、歯科処置、注射針を取り替えない不衛生な注射処置、予防注射を受けた方
3.覚醒剤などの回し打ちをした方
U.経皮、経粘膜感染
1.刺青、鍼、ピアス、出血を伴う民間療法
2.歯ブラシ、かみそりなどの共用(家族内感染、日常生活関連感染と重複します)
3.夫婦間以外の不特定多数の性行為 ことに出血を伴う危険な性行為
V.日常生活関連の感染
1.HCV感染を受けている患者さんの家族-(例)母児感染、夫婦間感染、その他、日常生活での用具の共用 (家族内感染は感染経路として重要です。患者さんのご家族はぜひHCV検査をお受け下さい)
W.医療関連感染(職業上の感染)
1.使用済み注射針で手指を刺す針刺し事故
2.血液が皮膚の傷口を汚染する事故
X.その他
 検診や医療機関を受診して肝機能検査が異常であるとされ、未だ、肝炎ウイルスの検査をされていない方
(医師 相川 達也)