1.紫外線について
 太陽からの光は、波長の長い方から順に赤外線、可視光線、紫外線、電離線(γ線、X線)に分けられています。この中で、紫外線はさらにUVA、UVB、UVCに分けられています(図1)。このうちUVCは、成層圏のオゾン層に吸収されるため、地上に届くのはUVAとUVBの一部です。人は、紫外線を浴びるとビタミンDが体内で作られたり、乾癬やアトピー皮膚炎という皮膚病が改善したりという良い面もありますが、大量の紫外線を浴びるとサンバーンやサンタンと呼ばれる日焼けをおこしたり、少量の紫外線でも長年にわたってあび続けると年をとってから、しみ、しわ、良性、悪性の腫瘍ができます。さらに、紫外線は皮膚の免疫反応を抑え、皮膚癌をできやすくしたり大きくなりやすくしたり、光線過敏作用という皮膚病を起こしたりします。                  
2.日焼けについて
 海水浴、家外での労働、アウトドアスポーツなどで大量の紫外線を浴びると数時間後に皮膚が赤くなり、6〜24時間後にピークになり、次にほてり感や痛みを伴ってむくんだり、水ぶくれができたりします。これをサンバーンと言います。さらにひどいと、熱射病になったり高熱が出て意識がなくなったりします。また、長い間紫外線を浴びていると、皮膚の中のメラノサイトというメラニン色素を作る色素細胞がメラニン色素を大量に作り、皮膚が黒くなります。これをサンタンといいます。皮膚の色を小麦色にするために紫外線をわざわざ浴びることは、皮膚に余分な傷害を起こすので良くありません。サンバーンを起こす紫外線は主にUVBですが、一部UVAも関わっています。UVBは、ガラスを通過しないのでガラスで防げますがUVAは皮膚の奥深くにまで入り込みます。このサンバーンを避けるためには、不必要な日光浴を避け、外に出る時は日傘、広いつばのある帽子、長袖、長ズボンの着用と日焼け止め剤(サンスクリーン剤)の使用をおすすめします。
3.サンスクリーン剤
 夏(5月〜8月)はUVBが冬(11月〜2月)の4〜6倍多く降り注いでいますが、UVAは年間を通してほぼ同量が降り注いでいます。ですから毎日屋外活動をする場合には、サンスクリーン剤を常時塗るのが理想的です。
 サンスクリーン剤は、化学的遮光剤(PABAはUVBを、ベンゾフェノン系はUVAとUVBを、ベンゾイルメタン系はUVAを吸収)と物理的遮光剤(二酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、酸化マグネシウム、カリオンなどでUVを散乱)を混合した製品(ローション、クリーム、ファンデーション、リップクリーム)が多いです。以前は塗ると白くなる製品が多くありましたが、最近は扱いやすくなっています。化学的遮光剤は、まれにかぶれを起こすことがあるのでかゆみや赤みが出てきたら、ノンケミカルとか吸収剤未使用とか書かれている物理的遮光剤のみのものを使用します。サンスクリーン剤の性能はSPF(UVBに対する防御効果の程度)という値とPA(UVA対する防御効果の程度)という値で表します。この値が大きければ大きいほど性能が良いのですが、UVBに関しては、SPF50以上では性能にほとんど差がありません。また、UVAに関しては、軽い屋外活動、ドライブならPA++で充分ですし、海水浴などではPA+++にします。汗で落ちてしまうので3時間に1回くらい塗りかえた方が良いでしょう。
 最近はオゾン層の破壊が進み地上に降り注ぐ紫外線が増えています。日頃から不必要な紫外線を浴びないように気をつけ快適な生活を送りましょう。
(医師  松永和歌子)