【静かに進む「肺の破壊」】
 私たち人間が長年にわたって、鼻や口から有害な粒子やガス(タバコの煙・大気汚染など)を吸い込んでいると、慢性的な炎症が気管支や肺胞(肺の組織の最小単位)に生じ、肺胞が徐々に破壊されていきます。この状態が進行していくと、肺の組織がスカスカになるような変化が生じ、さらには肺の機能も低下します。その結果、咳、痰、息切れ、労作性呼吸困難、などの症状を自覚するようになります。このような状態がCOPD(慢性閉塞性肺疾患)と呼ばれるもので、破壊されてしまった肺胞が完全に元に戻ることはありません。 
 1960年代以降、タバコの販売量や消費量が増加し、これに約20年遅れてCOPDによる死亡率が増加しています。「国民衛生の動向」によれば、COPDは2000年に死因の第十位に登場し、現在、40歳以上の日本人の約530万人がCOPDに羅患していると言われています。COPDの最大の外因性危険因子は喫煙であり、喫煙に対する感受性の高い喫煙者が発症しやすいと考えられています。つまり、COPDは肺の生活習慣病であると言えます。
【肺の健康に関するリスクを知ろう】
 胸部X線検査は肺の異常所見を見つける検査ですが、呼吸器疾患の早期発見は難しいとされています。早期発見のためには、呼吸機能検査が必要となりますが、従来の検査結果の表示は患者さんには理解しにくいものでした。
 最近、従来の検査結果の表示に加えて、「肺年齢」という表示コメントが出る呼吸機能の検査機器が開発されました。「肺年齢」とは、一秒間に吐ける息の量(一秒量)から、標準の方に比べて自分の呼吸機能がどの程度であるかを確認出来る目安となります。
 一秒量の標準値は、性別、年齢、身長により異なり、20歳代をピークに加齢とともに減少します。「肺年齢」を知ることは自分の肺の健康状態を実感し、普段は意識しない肺の状態を継続的にチェックして、将来における肺の健康リスクを正しく認識することが出来ます。そして、現在は問題がなくても、禁煙、呼吸器疾患の予防、早期発見・早期治療に役立ちます。
 当院における呼吸機能検査でも、「肺年齢」を知ることが出来ます。皆さんもぜひ一度、ご自分の「肺年齢」を検査し、肺の生活習慣病のチェックをしてみてはいかがでしょうか。
(臨床検査技師 堀江)