ストレス社会、24時間社会といわれる現代では、夜眠ろうと思ってもなかなか眠れない(入眠障害)。夜中に目が覚めてその後眠れない(中途覚醒)、朝早く目が覚めてしまう(早朝覚醒)、熟睡できない(熟眠障害)、と言った経験をお持ちの方が多いと思います。このような症状が重なって、睡眠が不十分となり、昼間の生活、仕事に支障をきたすのが不眠症です。
 不眠の原因として次の様な事が考えられます。
@環境要因(騒音、気温、採光など眠るときの環境)
A生理的原因(時差ボケ、交代制勤務など睡眠に関連した生活習慣の変化)
B心理的要因(悩みや心配事など心理的ストレス)
C身体的疾患(何らかの体の症状が原因。例えば痛み、かゆみ、咳、頻尿、頭痛等)
D薬理学的要因(カフェイン、ニコチン等の嗜好品に多く含まれる成分や、副作用として不眠を起こしやすい薬剤等)
E精神疾患(うつ病、不安障害の疾患では不眠が起こりやすい)

 不眠を治すには、睡眠に関連した生活習慣を見直すことが大切です。例えば睡眠環境を整える、食事や嗜好品についての習慣を改める、適度の運動をする、寝る前にリラックスする等々。
 しかしそれでも不眠が続く場合、睡眠薬を服用することは効果的な方法といえます。
 睡眠薬は効く時間の長さ(作用時間)によって次の4つのタイプに分けられます。

注【】内は製品名
@超短時間作用型…作用がすぐ現れ、作用時間も短いので翌日まで残りません。なかなか眠れない入眠障害に用いられます。(ソルピデム【マイスリー】、ゾピクロン【アモバン】等)
A短時間作用型…作用が現れるまでの時間は比較的に短く、作用時間も短いので入眠障害や熟睡できない熟眠障害に用いられます。(プロチゾラム【レンドルミン】、リルマザホン【リスミー】等)
B中時間作用型…超短時間型に比べ作用が現れるまでの時間はやや長く、また作用時間も比較的長いタイプです。作用時間が長いため翌日まで効果が持ち越されることがあります。夜中に目が覚めてしまう中途覚醒、朝早く目が覚めてしまう早朝覚醒に用いられます。(エスタゾラム【ユーロジン】、フルニトラゼパム【ロヒプノール】、ニトラゼパム【ベンザリン】等)
C長時間作用型…作用時間がかなり長く、日中も薬の作用が続きます。心理的原因や精神疾患などによる神経性の不眠に用いられます。(クアゼパム【ドラール】、ハロキザゾラム【ソメリン】等)

 睡眠薬は、不眠症状によって使用する薬も異なってきます。またアルコールと一緒には飲まないでください。ふらつきが出たり、異常な行動をしたり、記憶が抜けたりすることがあるので危険です。
 「飲み続けるとやめられなくなるのでは?」「だんだん効き目が無くなるのでは?」と言った心配をする方がいらっしゃいますが、これはかつて用いられていたバルビタール系睡眠薬によって生じたものです。現在汎用されているベンゾジアゼピン系、及び超短時間作用型の非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は安全性が高く、比較的副作用の少ない薬ですので飲み続けても問題は無いと思います。
 不眠が改善され、薬の必要が無いと思えるようになった時は、量を少しずつ減らしていく、他の睡眠剤に切り替えるといった方法でゆっくりと時間をかけてやめることが大切です。急にやめると、かえって眠れなくなってしまう事があります。睡眠薬をやめる際は、自分の判断で行わず、医師にご相談ください。

(薬剤師  増田)