肺気腫は慢性閉塞性肺疾患(COPD)の代表的疾患で、酸素を取り込み、いらなくなった二酸化炭素と入れかえると、というガス交換を行っている肺胞が壊れてガス交換ができにくくなる病気です。わが国では確実に増加しつつある疾患で、肺組織の老化や慢性の気管支炎、そして大きな影響があると考えられる喫煙と大気汚染の継続的な刺激などが複雑に絡み合い、何十年もかかって病巣が形成され、肺気腫という病気になります。
 特に喫煙は、煙草を吸い始めて二十年くらい経ってから症状が出現します。症状としては、坂道を歩くと息が切れる・急ぐと咳き込むようになった・長い階段を上るときには一休みしないと苦しい・汚いタンが増えた等があります。病状が進むと胸の周囲に樽状に広がって、口をすぼめてゆっくりと息をするようになります。
 肺気腫かどうかを調べるために、胸部X線検査と肺機能検査を行います。さらに詳しく調べるために高分解能CT検査(コンピュータ断層撮影)を行うことも重要で、これにより早期の肺気腫も発見できます。又、最近の肺機能検査では肺異年齢もわかりますので、治療の目安にもなり有用です。
 図1は肺気腫のX線画像です。過膨張(肺がふくらんだ状態で通常の肺に比べて膨張したままになってしまうこと)になってしまい、横隔膜が押し下げられた状態になり呼吸がうまくいかなくなります。正常画像(図2)に比べ横隔膜が平らになり、横から見ると釣り鐘状をした形になります。
 次に肺気腫のCT画像(図3)と正常CT画像(図4)を見比べてみましょう。正常画像に比べると、矢印の所のように黒く円形になっているところが多数みられます。これが慢性の炎症によって肺胞がつぶれてくっつきあい、肺に空気がたまって膨れ上がった状態です。
 正常の肺が風船とすると肺気腫の肺は紙袋のようで、膨らんでも縮むことができず、空気を吐き出す事ができにくくなってきます。このような状態になると徐々に呼吸機能の低下をきたし、かぜや疲労を契機に急性憎悪を起こし、呼吸困難や呼吸不全の状態となりしに繋がる可能性もあります。
 現在、肺気腫を治す薬はありません。破壊された肺の構造は元には戻らないため、病気の進行を食い止めることが治療の目的となります。そこで一番の治療法は禁煙です。(薬物もありますが、進行を遅らせるだけです)
 喫煙者の約5、6割が肺気腫に罹患し、中等度以上の肺気腫のほとんどは喫煙者です。その兆候は40歳前後で既に認められるとされています。ヘビースモーカーの方は一度、肺機能検査とCT検査を受けられることをお勧めします。

     

(放射線技師  石塚)