メタボリックシンドロームという言葉が使われて4年経ちました。今では巷で、私メタボでしてとか、歩くメタボ、メタボ会社、メタボ検診などなど言葉が氾濫しています。太った方を何となくメタボさん、なんて言っています、さらに、5月に当院で開催した看護の日の催しでも、これを取り上げて管理栄養士や看護師達職員がご説明しましたが、なかなか理解できなかったとの声がございました。確かに理解しにくい点もありますので、実際のメタボリックシンドロームとは何なのか、その定義、予防・対策など解説してみたいと思います。 | |||
定義 | |||
メタボリックは(代謝)の意味でシンドロームは(症候群)を意味し直訳すると代謝異常症候群(代謝異常によって現れる一群の症状)と言う事になります。そして、この基準の第一番目の項目が腹囲(いわゆるウエストではなく、おへその高さ)で男性が85cm、女性で90cm以上ある時にこの症候群が問題になってきます。ただ、これはあくまで目安です。何故このような基準が出来たのでしょう。 CTでおへそのラインを撮影した写真(図)をご参照下さい。この写真(図)から内臓脂肪の面積が計算できますが、この面積が100cm2を超えると心臓病のリスクが高まる事が分かってきました。高血糖や高脂血症、高血圧になり易く結果的に心臓病、つまり心筋梗塞の危険が高まるのです。この内臓脂肪面積100cm2に相当する腹囲がそれぞれ85cm、90cmという訳です。この内臓脂肪の面積の測定は当院のCTスキャンでも可能です。食事にも関係なく、その日にすぐ結果が出ますので、もし気になる方は一度測定なさってみて下さい。必要ならダイエットして、その後の結果と比較するのも励みになります。 でも当然ながら、これがすべてではなく、腹囲が基準値以上でもメタボでない方は、ある企業の調査で60%にものぼったとのこと。それでは、その他何を持ってメタボと言われる状態なのでしょう。其れには3つの要素があります。 まず一つは、高脂血症です。これは中性脂肪150mg/dl以上、HDLコレステロール(いわゆる善玉コレステロール)40mg/dl未満の何れかまたは両方の場合です。これにより動脈硬化が起き易くなります。また最近LDLコレステロール(悪玉)に関しても色々言われています。これは基準には入っていませんが。高ければ動脈硬化が進みます。ただ、低値も問題で、40mg/dl以下になりますと、今度は血管がもろくなり脳出血の発症率が高くなるというレポートが最近だされました。 次に高血圧です。これは収縮期圧130mmHg以上、または拡張期圧85mmHg以上のときです。高血圧の基準は年々低下し特に収縮期圧はかなり低く規定されています。ただ血圧は変動しますし、高血圧の体質は遺伝もします。できれば、24時間血圧計で一日の変動を検査しておくことをお勧めします。 最後に空腹時血糖です。これが110mg/dl以上の時です。これも遺伝的要素もありますので、血族で糖尿病の方がいらっしゃいましたら、とにかく太らない事が大切です。 つまり腹囲が基準を超え、さらに高脂血症、高血圧空腹時血糖高値のうち2項目が該当すると、メタボリック症候群という、嬉しくない称号を戴いてしまうのです。
|
|||
予防・対策 | |||
腹囲はすぐには減少しません。じゃあ何を目標にすれば良いのかと言いますと、体重です。体重は腹囲より正確に測定できます。まず体重の5%を減らしますと、血糖値、血圧、中性脂肪が改善される事が分かっていますので、とにかく減量です。1〜3か月かけて徐々に減量するのが良いとされています。 それでは、どうすれば体重が減るのでしょう。当然ながら食餌療法と運動療法です。と、分かっていても多忙な毎日、なかなか運動は出来ませんし、美味しい物のコマーシャルが氾濫する現在、食餌療法も困難です。でも、とにかく一度生活を見直し、食べすぎか運動不足かその両方か分析してみて下さい。そうすれば自ずと減量の方法が見えてきます。食餌に関しては、食べ過ぎ、カロリー過剰の方は、とにかく油脂の多い物、果物、甘味を減らして下さい。それだけでも、随分減量できます。また、食品の質を選ぶ事も大切です。特に酸化コレステロールはプラーク(血管内の粥状変化で、血管壁を脆くします)を作り易いと言われています。これには古い油があります。食べ残しを何度も温めなおしたり揚げたり、もちろん古い油は使用禁です。電子レンジで何度も温めたり、長時間加熱すると酸化コレステロールが増えます。変色した油は食べないようにしてください。ただ、これも野菜などと一緒に食べれば多少軽減されますので、動物性の油脂や揚げ物を食べる時には同時に緑黄色野菜も摂って下さい。また、油脂を含む物はカロリーも多いので、控えて下さい、そして食塩の取り過ぎは高血圧の原因となります。これも意識して下さい。 運動療法としては、まず生活を振り返り日常の行動の中に運動を取り入れてみて下さい。1日30分で良いのです。階段もありますし、テレビを見ながら足踏みしても良いのです。ことさらジムに通う必要はありませんので、長続きするご自分に合った運動を生活に取り入れて下さい。 既にメタボリック症候群になられた方は汚名返上、なりつつある方はならないように、でもどうしても改善がみられない時には薬物も必要です。無理せず、焦らずでもいきづまったときには、どうぞご相談下さい。 |
|||
(医師 相川 礼子) |