今日では医療機関を受診したとき、あるいは健診を受けたときにも肝機能検査は日常的に行われるなじみの検査です。しかし、多くの肝機能検査の項目のなかで、どれかが異常だとわかっても異常の原因をすぐに特定することは困難です。 日常的にその中でAST(GOT)、ALT(GPT)の値が高くなる肝機能障害では例え症状がなくとも肝炎ウイルスの感染を忘れてはなりません。肝炎ウイルスには輸血や覚醒剤の回し打ち、刺青、まれにはピアスや鍼で感染するB型、C型肝炎とウイルスに汚染された食物や水から(経口的)感染するA型、E型肝炎があります。A型とE型肝炎は悪い衛生環境で生活している人々に感染しますので、衛生状態の改善されたわが国では過去のものと思われていますが、まさに忘れたころに、A型、E型肝炎の患者さんに遭遇します。 ことにE型肝炎の検査は教科書的にはわが国では発生しないとされているため、まだ、保険診療にも取り入れられていないので、見のがされてしまいます。しかし、流行地に滞在してE型肝炎に感染した人の他に海外旅行をしないのに感染した人があることもわかってきて、日本にも土着のウイルスがあることが証明されました。日本のE型肝炎の患者さんは中年以上の男性が多いのですが、私たちは妊婦さんが感染していた事例を経験しました。妊婦が感染すると、ことに妊娠後期での感染は重症化し、死亡することも多いとされていることから特別に注目されています。この患者さんは幸い軽症ですみましたが、わが国では妊婦の感染が初めて発見されたことで学会誌に報告いたしました。このように初診時に主治医が肝機能検査をしたことが発見につながりました。今では私たちは急性肝炎の中でE型肝炎が決して少なくないことを知りましたので、肝機能異常があったら必ずE型肝炎ウイルスの検査をすべきだと考えています。
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(医師 相川 達也) |