■大腸憩室とは
 大腸憩室とは大腸粘膜の一部が腸管内圧の上昇により、嚢状になったものをいいます。大腸憩室が多くできた状態を大腸憩室症といいます。大腸憩室は、先天性憩室と後天性憩室に分けられますが大腸憩室の大部分は後天性憩室で、比較的高齢者に多く発生する病気です。近年、大腸憩室の人は増加しています。
■大腸憩室の原因
 大腸憩室の第1の原因は、大腸腸管内圧の上昇があげられます。すなわち、最近の食生活の欧米化とともに肉食が多く食物繊維の摂取量が減少したため、便秘や腸管のれん縮、ひいては腸管内圧の上昇を起こしやすくなったためと考えらます。第2の原因として、加齢による腸管壁のぜい弱化が考えられます。その他、体質、人種、遺伝、生活環境などの要因も複雑に絡み合って発生すると考えられています。
■大腸憩室の症状
 症状としては、多くは無症状のまま経過しますが時に便通異常、下痢、軟便、便秘、腹部膨満感、腹痛などの腸運動異常に基づく症状を起こします。合併症としては、憩室の出血や憩室炎が10〜20%の頻度で発生し強い腹痛、下痢、発熱、血便などを伴うこともあります。憩室炎は、憩室内に便がたまって起こるとされていますが、進行すると穿孔、穿孔性腹膜炎、狭窄による腸閉塞、周囲臓器との瘻孔形成なども生じることがあります。
■検査と診断
 大腸憩室症の検査には、注腸造影X線検査が最も有用です。大腸内視鏡検査でも粘膜面に円形、または楕円形のくぼみとして認められますが憩室そのものは注腸X線検査が一番です。しかし、合併症として出血を伴う場合は大腸内視鏡検査が第一選択です。大量出血では血管造影が必要、また憩室炎の合併時には、腹部超音波、CT検査、MRIなどの検査が必要です。
■治療の方法
 無症状であれば、特に治療の必要性はないですが、腸運動異常に伴う症状があるときは薬物の投与が必要になり、また、憩室炎を合併した場合には、入院の上、絶食、輸液、抗生剤の投与が必要になったりします。憩室出血の多くはこの治療で止血しますが、大量出血が持続する場合は血管造影や内視鏡により止血術が必要になります。保存的治療で軽快しない場合、再発を繰り返す場合、腹膜炎や腸閉塞の場合は外科的治療が必要になります。
  〜当施設における大腸憩室症例〜   ※→の先が大腸憩室

           (CT検査)
CTコロノスコピーによって抽出されたS状結腸の憩室(→部)

(注腸X線検査)

         (大腸内視鏡検査)
大腸内視鏡検査によって、→の部に憩室の入口部がいくつか見られる
(放射線技師 山口)