■1.糖尿病とは?
 体内で血糖を下げる唯一のホルモンの一種であるインスリンの作用が不足することによって、慢性的に血糖値が上昇した状態を糖尿病といいます。その中でも、インスリンが全く分泌されなくなる(膵臓のβ細胞が破壊されてしまうことによる)型を1型、インスリンの分泌低下やインスリンの働きが悪くなった状態(インスリン抵抗性)の型を2型と分類します。我が国の糖尿病の90%以上が2型です。現在我が国では糖尿病、およびその予備群は実に2210万人以上と推計され、この10年で1.3倍になるペースで増加し続けているのです。
■2.糖尿病の治療
 A.治療
 食事療法、運動療法が基本中の基本です。それでもコントロールが不良の場合は薬物療法を行っていきます。薬物療法は経口血糖降薬(主に膵臓のβ細胞に働きかけてインスリン分泌を刺激する作用)とインスリン注射があります。
 B.新しい薬、DPP-4阻害薬
 我々が食事をしてその内容物が消化管(特に小腸)に達すると小腸からインスリン分泌を促す消化管ホルモンが分泌されます。それをインクレチンと称しています。現在はこのタイプのホルモンにGIP、GLP-1の2種が知られています。これらは分泌されてから短時間で分解されてしまい、半減期は約5分です。つまりこれらのインクレチンがもっと長く働けば、もっと強くインスリン分泌が刺激されることになります。そこでインクレチンを分解してしまう酵素であるDPP-4を邪魔する(阻害)ことで、インクレチンの半減期を延ばし、結果としてインスリン分泌を刺激して血糖を下げる作用を増強することが出来るのです。これは今までの経口薬と作用の仕方が異なり体重増加が少ない、低血糖を生じない等のメリットを有し、経口投与が可能です。
■3.今後の展開
 新薬では今後インクレチンの1種のGLP-1の作用を有する注射薬も控えています。これらの新薬には勿論期待するところ大ですが、残念ながらまだ糖尿病治療での位置づけが完全に定まってはいません。まずは従来の治療でうまくいかない場合に併用が認められていきます。新薬の位置づけは難しいもので、究極にはいずれの薬物療法にしても糖尿病合併症の予防、脳梗塞、心筋梗塞の予防に役立つものが残っていきますので暫くは糖尿病専門医の発するこれらの情報をきちんと咀嚼して日々の治療に役立てていくことが必要と思います。
(医師  小島 眞樹)





 糖尿病コントロールの指標として、HbA1cがあります。これは血液中の赤血球に含まれるたんぱく質であるヘモグロビンの一種で、血色素(血液が赤く見えるのはヘモグロビンによるため)とも言われ、肺で酸素を受け取り、体中の組織に酸素を運搬する役割を持っているたんぱく質です。
 血糖値が高い状態が長期間続くと、血管内の余分な糖は体内のさまざまなたんぱく質と結合する性質があります。この際、赤血球に含まれるたんぱく質であるヘモグロビン(Hb)と糖が結合したものがグリコヘモグロビンで、このグリコヘモグロビンはいくつかの種類に分けられます。その中のひとつがHbA1cです。その値は糖尿病と密接な関係があり、高血糖で血液中の糖の量が多ければ多いほど、余っている糖が多くなり、ヘモグロビンと結びつくものも増え、HbA1cの値が増加します。
 赤血球の体内での寿命はおよそ120日(4ヶ月)といわれていて、この間中ずっと体内を巡っていて、血液中の糖と少しずつ結びつきます。HbA1cの生成は、血中のヘモグロビンの存在期間における平均血糖値に依存しています。したがって、血液中の赤血球の寿命の半分ぐらいに当たる時期(1ヶ月から1ヶ月半)の血糖の平均値を反映しているといわれています。実際には、過去の血糖値の影響は一定ではなく、最近の血糖値ほど大きく影響します。(直前の1ヶ月の血糖値が約50%、その前の1ヶ月が約25%)
 基準値は4.3〜5.8%で、6.5%を超えると糖尿病と判断してよいといわれます。通常、高値を示すのは高血糖状態になる疾患で大部分は糖尿病ですが、他に内分泌疾患によって起こる二次性糖尿病でも高値になります。また、HbA1cの値は赤血球の寿命と関連するため、出血や鉄欠乏性貧血の回復期、溶血性疾患などで低値となります
(臨床検査技師 堀江)