B型肝炎ウイルス(HBV)にゲノタイプという分類があることをご存知ですか?HBVには遺伝子の違いによってタイプの分類がされています(HBVの血液型のようなものです)。現在A〜Hまでの8種類がわかっています。
 世界各国でHBVゲノタイプを測定してみると、欧州や中東ではA・D、アジアではB・C、南米ではFと地域ごとに優位なタイプが違います。アジア圏の日本はBとCが90%を占めています。ですが、同じ国内でも地方によってその割合は大きく変わってきます。特にCは九州で割合が一番高く、北上するにしたがって、減少する傾向がみられます。韓国ではCが100%といわれており、日本の先住民がもともと感染していたのはBではないのかといわれています。さらに、アジアに本来無かったAが九州に見られるのは江戸時代の南蛮渡来のものと言われています。ゲノタイプをみることで歴史を垣間見ることができる程、人間とHBVは古い付き合いなのです。
 ゲノタイプの違いによって病態に差があることもわかっています。急性肝炎ではBの割合が多く、慢性肝炎ではCの割合が多くなっています。つまり、ゲノタイプBは急性になりやすく、ゲノタイプCは慢性になりやすいということです。あくまで「なりやすい」なので注意してください。
 HBVゲノタイプの分類はウイルスのDNAを解析して調べます。以前は煩雑な検査でしたが、簡易な試薬が開発されたことにより本院でも測定が可能となりました。本院を受診されている患者さんではどのような傾向にあるのか、測定したゲノタイプのデータから考察しました。
 対象は2006年から2009年に当院を受診されたB型肝炎の方69名(男性41名、女性28名)です。
図1は男女で分けたグラフです。男女ともに約90%はゲノタイプBとCで占められていますが、近年ゲノタイプA、或いはDと過去に水戸地区では殆ど見られなかったゲノタイプが見出されてきています。また、それが男性に多いことが言えます。表1は年代ごとの分布です。ゲノタイプBとCは年代が上がるほど同じ比率になっていきます。ゲノタイプCでは年代が上がるほど女性の割合が多くなっていることもわかりました。表2は急性肝炎と慢性肝炎で分けた分布です。急性肝炎でゲノタイプAが認められています。慢性肝炎では90%以上がBとCで占められ、CがBの約2倍の頻度でした。
 まとめです。本院におけるHBVゲノタイプはBとCとで約90%を占めますが、ゲノタイプAの感染が散見されてきました。しかもその多くが男性であることもわかりました。ゲノタイプの測定が、治療・予防等のお役に立てればと思っています。
(臨床検査技師 島田)