当院の日常診療で、患者さんがサプリメントに関連して実際に被害に遭われている場面を少なからず経験してきました。ここでその扱い方に関連して注意を喚起したいと思い特集しました。
 サプリメントや健康食品という言葉には行政的な定義はありません。サプリメントとは「特定成分が凝縮された錠剤やカプセルの形態をした製品」であり、健康食品とは「健康の保持増進に資する食品全般」が該当すると考えられています。ちなみにサプリメントの語源はアメリカ合衆国での食品区分の一つであるダイエタリー・サプリメントであるとされています。本来は不足しがちなビタミンやミネラル、アミノ酸などの栄養を補給する補助のために使用する食品のことです。別名、栄養補助食品や健康補助食品とも呼ばれます。
 日本人の寿命は女性が世界一、男性は第四位です。それでいてテレビや雑誌ではより健康になるための特集が必ずなされ、世を挙げて健康になるための知識の普及が止むことはないようです。そういった一環として有名人が無節操にサプリメントを勧めていることも本当によく見受けます。勿論健康は誰にとっても一度きりの人生をより有意義に過ごすために大前提となる条件だと思います。しかしながら、健康でいること健康になることと、そのためにサプリメントを使用することはどうしても同一のこととは思えない症例、事象を数多く経験します。サプリメントを使用して却って健康を害してしまった方、法外な値段でまとめ買いを勧められた方(300〜400万円とも??)。ある病気が治ったと宣伝されたため、実際に治った本人に会いに行った患者さんがいました。直接確認したところ虚偽の宣伝でした。このような話は枚挙に暇がありません。本当にサプリメントは必要なのでしょうか、極めて疑問です。
 日本国内で我々の口に入るものは食品衛生法と薬事法といった法律で定義、規制されています。つまり、口に入るものは「食品」あるいは「薬」のいずれかしかないのです()。健康食品、サプリメントをはじめ、栄養補助食品、健康補助食品、機能性食品、保健機能食品、特定保健用食品、栄養機能食品、特別用途食品など様々な名称は存在しますが、分かりやすく言えば、国が制度を創設して機能等の表示を許可している名称とそうでない名称があります。つまり、「健康食品」=保健機能食品(特定保健用食品と栄養機能食品、国が表示を許可)+いわゆる健康食品(国が保健効果や健康効果の表示を許可していない)、です。つまり、サプリメントはこの後者の健康食品内の一形態です。

国の認定
A.特定保健用食品は通称「トクホ」です。これは実験データに基づいて審査され健康づくりを目的として食習慣改善のために「〜が気になる方に」という効能効果を表示することを日本政府から認可された食品です。キシリトールなど800件以上が認定されています。
B.栄養機能食品は2001年に導入された分類です。食生活で不足しがちな栄養成分の補給を目的にした食品です。特定の栄養素を厚労省の設定した基準を含んでいれば食品衛生法に基づき表示が許可されるものです。主にビタミンやミネラル類が該当しています。
 その他は国が認定していない機能性食品、栄養補助食品、健康補助食品、栄養強化食品、栄養調整食品、サプリメント、無承認無許可医薬品などとなります。 
 国が認定した「トクホ」などにはある程度の科学的根拠がありますが、その他のいわゆるサプリメントを含む健康食品には科学的根拠はありません。あくまでも食品の一つとして消費者の自由意志に基づいて摂取することになるのです。また、にも示したように、ましてはこれを病気の治療に使うことはナンセンスです。健康な方は、禁煙、塩分制限、腹八分目を心がけ、食後に運動(散歩、水泳)しましょう。病気がそろそろ気になる方は、「〜が気になる方に」と表記のある「トクホ」を常識的な量の範囲で使用することは結構ですが、あくまでも食品であり病気の治療や治癒は期待できないのだと理解して使用することが重要です。
 私の担当する慢性疾患に悩んでいたある患者さんには(現在は幸いに治癒しました)、かつてアロエ、クロレラ、光線療法等、健康食品や民間療法に振り回された時期がありました。病気の治癒した今でこそ笑ってお話し出来るのでしょうが、病気に悩む時期は良いと聞いたものは何でもやりましたと言っておられました。私どもも患者さんのデータのみでなく、悩める心、科学的根拠のないものにも飛びつきたいほどの不安感などに思いを至らせる医療を心がけて参りますので一緒に病気と闘って行きましょう。
(医師 小島 眞樹)