γ-GTPは検診を受けると肝機能検査の一項目にこれがあります。この検査が異常とされた時、何を考えるかはなかなか難問です。想定される原因は、飲酒習慣によるアルコール性肝障害、肥満や脂質代謝異常などでの脂肪肝が一般的ですが、最近気になるγ-GTPが異常となる病気を2つばかり説明いたします。 |
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アルコールは医学的には薬物に分類されますし、治療薬のほとんどが程度や起こり方は様々ですが肝障害を起こします。どんな物質も食物であれ、薬物であれ、口からでも、注射からでも体に入ると必ず肝臓に運ばれ、肝臓で処理され、体に必要なものとして利用されたり、有害なものとして、解毒されます。まとめて肝臓の代謝と呼んでいます。人間は長い歴史の中で、体を守るために酵素の力で代謝する膨大な体系を作ってきました。しかし、自然界にも毒キノコのように肝臓を破壊する肝臓毒がたくさんあります。また、自然界には無い物質は肝臓に運び込まれても、これを処理する能力を必ずしも備えていません。最近、このような長い人間の歴史の中で経験しなかったような物質が、工業的に作られ、あるいは、何となく体にいいといった風聞から商品化された健康食品、しゃれてサプリメントといった形で使う方が増えています。検診の結果を持ってきて検査を希望される方々に私は必ずお酒の他に、これらの商品や、ご先祖様が食べていなかった食品をとっていないかを聴くことにしています。
最近、ウコンを含んだ健康食品をとり始めて3ヶ月で劇症肝炎になり、お亡くなりになった方を経験しました。前にも、何人かウコンの肝障害を経験していますが、これほどの重症は初めてでした。ウコンに関しては他の病院でもよく経験しますし、確認された薬剤性肝障害の中ではウコンが第一位を占めています。ウコンをとらないように掲示している病院もあります。
最近、NHKの「ためしてガッテン」という番組でウコンには鉄分が多いからだと解説されていたそうですが、過剰な鉄分は肝障害のある患者では確かに肝障害を悪化させます。この話はウコンを食品として扱ってのことで、食品が劇症肝炎を起こしては大問題です。ところで一概にウコンと言っても、中国と我が国では呼称が同じでも別物であったり、日本では食品と分類したり、薬物として分類したり混乱があります。中国では薬品として扱われ、食品に使うものとは種類が違います。薬品であればきちんと検定を受け、おのずと薬品として市販さるべきです。ウコンの薬効はいろいろに報告され、また、含有する成分も異なり、副作用もあります。ウコンと称するものをきちんと分類し、漢方薬として、薬効、副作用を規定し、販売するべきです。それをカレー粉と同じように食品として流通させていることに問題があります。大企業がその信用力と膨大な宣伝費を使って、健康食品、サプリメントとして大々的に宣伝しています。「食品ではない、クスリだ。だから体に良いのだ」という陰のメッセージが含まれて、ひとは買い求めるのでしょうが、薬物は毒物でもあることを忘れてはなりません。ウコンを実際に使っている方は肝機能検査を受けることをお勧めします。 |
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γ-GTPは胆道系酵素と称されるところから、胆汁に関係する胆石、胆道癌、膵癌などで異常値となります。また、希な病気ですが、決して無視できない原発性胆汁性肝硬変症でも異常値となりますが、一般的にまだ日常の臨床で注意が行き届いていないことから、漫然と見逃されていることもままあります。
原発性胆汁性肝硬変症は、まだはっきりした病因も治療法も確立されていません。この病気の性質から、門脈圧が上昇し、食道静脈瘤をよく合併し、吐血を起こすことで、生命を脅かします。一部は進行して肝移植を考えなければなりません。幸い、我が国ではウルソという内服薬が肝臓病に漠然と使われていましたが、これが、原発性胆汁性肝硬変症の進行を抑え、生命予後を延ばすことがわかってきました。これを服用していると、確かに病気の進行は治まります。一方、この病気の特徴に体のかゆみがあるため、皮膚科の医師がウルソをかゆみの原因と考えて服薬を止めさせたら、急速に病状が悪化し、吐血を起こした患者さんがありました。幸い、出血を止めて、ウルソを再開しましたら病状は落ち着いてきました。しかし、進展してしまった門脈圧亢進症は残り、再出血の危険を抱えています。ウルソは長期に服用しなければなりませんが、決して、途中で服薬を中止しないようにお願いします。 |
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