CH50と聞いても、検診等で行う項目でもありませんし、馴染がある方は少ないかと思います。CH50とは、補体と呼ばれる値の一つです。
補体とは
体内に侵入してきた病原体と戦う生体反応を補助するタンパク質の一群を示しています。補体には20種類以上の成分があり、普段は不活性の状態で血液の血清中に存在し、体内を循環しています。
病原体に接触することで最初の補体成分にスイッチが入り、次の補体成分、さらに次の補体成分へとドミノ倒しのように次々と反応が進んでいきます(カスケード反応)。この反応には3つの経路(古典経路・レクチン経路・第二経路)がありますが、最終的に、病原体の表面に補体が集合して穴を開けます。その結果、病原体は融解され、排除することができるのです。
CH50とは
ある条件のもとで測定した補体の活性量をCH50といいます。CH50のC≠ヘcomplement(補体)の頭文字で、50は検査方法に由来しています。具体的には、羊の赤血球を用意し血清と混ぜ、50%溶血させるのに必要な血清の量から求めます。現在はこの変法が用いられて、自動分析器で測定しています。
CH50値で分かることは
当院での基準値は36〜60 U/mlです。
補体は病原体の感染防御を担っており、少なくては感染しやすくなってしまいますし、かといって多すぎても壊さなくてよいもの(自分の細胞)まで壊してしまうため問題があります。
補体成分には感染が起こったときに増えるものがいくつかあるため、急性感染症や炎症がある際に高値を示します。消費されてしまって少ない場合と、もともとの生産が少ない場合には、低値を示します。自己免疫疾患や膠原病がこの前者にあたります。補体の値は炎症の目安に用いられ、免疫病の診断補助になります。急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変などは後者にあたります。補体は肝臓で生産されるため、肝臓の機能が低下していると、生産されにくく低値を示します。
当院では
CH50-0とCH50-72という形で2回測定を行っています。CH50-0は、採血後速やかに(0時間で)測定し、CH50-72は、採血後低温で72時間保存後(3日後)に測定した結果になっています。
肝疾患、特にC型肝疾患の方では、低温にて血清を保存しておくと、C型肝炎ウイルス感染の誘導により生成されるクリオグロブリンと接触し、カスケード反応が進んで低値を示すことがあります(CA:コールドアクチベーションと言います)。
CH50-0とCH50-72を比較した際、数値が低くなっていたらCAが起きているということになり、C型肝炎ウイルス量の量的変動の目安や肝炎症状の診断補助に用いられています。
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