”患者さんとご家族のための勉強会”を開催
〜ご参加いただきありがとうございました!〜

 平成151025日(土)、茨城県民文化センター小ホールにて、当院理事長相川達也先生、整形外科斎藤禎量先生の講演会(内容を掲載)を無事に開催することができました。

 主催である院内研修委員会の堀江さんに、お話しを伺いました。
 当院に研修委員会ができて6年ほどになります。院内で職員が主となり定期的に、患者さんとご家族のための勉強会や職員向けの勉強会を行ってきました。


 今回、理事長先生、斎藤先生、小島先生にご協力いただき、講演会を開催することができました。
 日頃ご自分の病気についての疑問や悩みを持っている患者さんも多いと思いますが、専門家の先生方の講演を聞く事により、ご自分の病気の知識を深め、不安や悩みの解決の手助けになり、また日々の療養生活や健康増進に役立てていただければと願っています。
 さらに、機会があればその他のテーマでも、講演会を開催することができるように、研修委員一同努力していきたいと思います。

肝臓が悪いと言われたら      相川 達也

肝機能検査

 肝臓の検査を希望されて来院される患者さんの多くは、検診がきっかけです。検診での肝機能検査は表1、2の様な項目が使われます。これだけの項目から、具体的な肝臓病を予想することができます。次に確認のための検査―特異的検査を行います(表3)

ここで注意しなければならないのはGOT、GPTの正常値です。当院の人間ドックなどをうけた方のうちから、肥満、飲酒、糖尿病など他の疾患もないといった厳格な基準で健康な人を選んで正常値を見ますとGOT10〜28、GPT3〜28となります。これは肝炎治療で、肝臓が治ったと判定するときに従来の40単位では甘いと言うことになります。実際にGPTが30〜40単位の方からは再発が見られています。

肝炎の治療

 最近は慢性肝炎のインターフェロン治療はリバビリンとの併用療法が主流となりました。肝機能が正常になり、ウイルスも消える場合を著効といいますが、単独療法では効かなかった人々でも著効率が高くなっています。再治療をおすすめしている根拠です(表4)
 最近、C型慢性肝炎の瀉血療法が話題になっています。鉄は生命の誕生とともに大切な体の成分です。例えば血液中の血色素の成分として酸素を運ぶ大切な役目を持っています。一方で裸のままの鉄元素は体の成分と反応して、活性酸素、フリーラジカルを作って体の組織を傷つけます。体の中で少し鉄欠乏状態を作ってやると肝機能が正常化するだろうと言うのが瀉血療法の眼目です。ウイルスを排除はできないが肝機能を正常化するには強力ミノファーゲンやウルソを根気よく使えば可能ですから、瀉血は第一の選択とはいえません。私達の病院で貧血の人と、そうでない人でインターフェロンの治療に差はありませんでした。

健康食品等による肝障害

たくさんの医薬品が開発されたことと、社会不安がたかまってきて、「薬効」をうたう「健康食品」を多くの人が使うようになって、肝障害が無視できなくなりました。
 医薬品であれ、健康食品であれ、いったん体の中に取り込まれれば、肝臓はこれを代謝し排出しなければなりません。外来物は肝臓の酵素を誘導し、代謝経路の主役はP450という薬物代謝酵素系の処理を受けます。このとき様々な中間代謝産物が生じ、一部は使用開始して数ヶ月たって、さらには数年経ってでも、肝臓に傷害性に働きます。この酵素系は個人、個人で量も性質もすこしずつ異なり、肝障害も全員に起こるわけではありません。しかし、誰が肝障害を起こすかを事前に知ることはできません。アガリクス、ウコンなどでの肝障害が日常臨床でしばしば見られています。「食品」と称しながら「薬」だと思いこませて使わせる商法にまんまと乗せられて「効いた」などと自己判断で使うことは危険です。医薬品は動物実験での効果からはじまり、安全性の確認、ヒトでの比較試験など、多くのハードルを越えて初めて実際の使用に今日されるのに多くの日数と膨大な費用を要します。安全性の確認もなく、効果についても試験らしい試験もない「健康食品」を薬と同等に考えるのは、あまりにも危険です。

足腰の痛みとどう付き合うか          斎藤 禎量


 足腰に痛みをきたす病気は沢山あります。その原因も年代によって違いがあり、簡単に治るものもあれば、慢性化するもの、再発を繰り返すものなど様々です。それらの中から代表的ないくつかを取り上げ説明し、併せてどういう心構えでこれらの病気と付き合っていったら良いか述べます。


若年世代の腰痛

椎間板ヘルニア

若い人に腰痛をきたす代表的な疾患です。重いものを持ち上げたときは勿論、なにげない動作でも発症します。病状が進んでくれば足のほうまでしびれてきます(坐骨神経痛)。痛みを避けようとして上半身を傾け、ちょうどお尻を横に突き出したような姿勢をとるようになります。椎間板の周囲の繊維輪というスジが裂け、髄核というジェリーのような芯の部分が脱出するものです。初期なら安静にしていればたいていは2〜3週間でよくなります。無理をすれば慢性化し、長引いたり再発を繰り返すようになります。

過労性腰痛(筋・筋膜性腰痛)

長時間の不自然な姿勢での作業、同じ動作を際限なく繰り返す労働など腰部への負担が過大となって生ずる腰痛です。筋肉や筋膜の浮腫や血流障害、炎症によるもので、動作時に腰がミリミリと痛い、腰の筋肉を押すと痛いなどの症状がみられます。併せて不眠症や胃腸障害、肩こりなど精神神経症状を含む全身症状まで出てきます。十分な休養をとることと労働条件や作業環境の改善が必要です。

高齢者の腰痛

変形性脊椎症

椎間板の退行性変化に始まり、脊椎全般に変性と変形が起こります。神経の圧迫や椎間関節の不具合を生じ、腰痛の原因になります。特に、起床時の違和感や疼痛が初期の特徴的な症状です。
 本症が進行すると間欠跛行を特徴的な症状とする「腰部脊柱管狭窄症」になります。

骨粗鬆症

女性ホルモンとの関連で閉経期以後の女性に多い病気です。骨にが入ったような状態になり、ちょっとしたことで骨折するようになります。重いものを持ったり、軽く尻もちをついた程度で背骨が潰れ、動けなくなります。腕の付け根、ももの付け根、手首のところの骨折もよく起こります。
 予防のために十分なカルシウムの摂取、適度な運動、日光浴が大切です。

変形性膝関節症
 膝の軟骨が磨り減って機能が低下し炎症を起こすと膝が痛み、みずがたまってきます。
 飲み薬や貼り薬のほかに、足底板や装具を用いますが、ももの筋肉(大腿四頭筋)を強くして膝を安定させることが治療にも予防にも有効です。

痛みとの付き合いを三つのキーワードで

「変化」、「総合」(全身)、「個性」の三つのキーワードを念頭において足腰の痛みとお付き合いしたいものです。

1.人は日々「変化」します。身体の中では、硬い骨も溶けては作られ少しずつ変化しています。だから8090歳になっても骨折は治るのです。
 遅い早いはあれ、よいことを粘り強く続けていけばやがてよくなります。

2.ホルモンや栄養、神経の働きなど「全身」的な条件によって骨・関節も大きな影響を受けます。腰や痛い、膝が痛いといってそこだけ問題にしても効果はあがりません。全身の健康管理が行き届けば足腰も次第によくなります。

3.人それぞれにもって生まれた素因=「個性」があります。どう努力しても腰の曲がる人、O脚の人、太れない人、やせられない人などヒト様々です。世間の評価にとらわれず、自分の個性に合った実質的に豊かな生活スタイルを求めることが大切と考えます。

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